目次
整備士に研修や更新は必要?
まずは整備士の資格を取得した後の研修や更新の有無について見てみましょう。
整備士資格に有効期限はない
自動車整備士の資格に有効期限はなく、1回取得すると生涯有効です。更新の手続きも必要ありません。唯一、資格が無効になる可能性があるとすれば、不正に取得したのが発覚したときでしょう。
なお、自動車整備士の上位資格にあたる「自動車検査員」は、年に1回自動車検査員研修を受けるよう義務付けられています(道路運送車両法第91条の3および同指定自動車整備事業規則第14条)。
自動車整備主任者も同様に年1回の研修を受けなければいけません(道路運送車両法施行規則第62条2の2の6)。こちらは法令研修と技術研修の2種類があります。
自動車検査員も自動車整備主任者も、整備士の中では責任が重い仕事です。自動車検査員は車が基準を満たしているか検査する役割があり、自動車整備主任者は分解整備が国の基準を満たしているかチェックします。
どちらも法令を遵守するのはもちろん、どんな技術にも対応できなければいけません。そのため、年1回研修を受けて、最新の法令や技術を習得するわけです。
どちらも研修を受けていないと、仕事をしてはいけません。仕事をさせてしまうと事業主に対して30万円以下の罰金が科せられます(道路運送車両法第110条)。ただし、研修を受けていないからといって、自動車検査員や自動車整備主任者でなくなるわけではありません。
常に新しい知識の習得は必須
自動車整備士の資格は、更新のために研修を受ける必要はありません。ただし、どんな車でも整備・修理対応ができるように、常に新しい知識や技術の習得は必要です。
車が故障したときは、迅速で確かな修理を求められます。その際に必要な知識や技術が不足していると、原因すら特定できません。本来なら多くの車を修理しているうちに培われるものですが、経験のない新型車となれば難しいでしょう。
そこで日整連(日本自動車整備振興会連合会)が中心となって研修を行い、より具体的に新しい知識や技術を吸収する機会を設けています。ほかにも、カーディーラーや代理店の整備士を対象に研修を行っているメーカーがあったり、独自の研修を行っている整備工場があったりするなど、どこも整備士のスキルアップに熱心です。
まじめに研修を受けていれば、どんな車にも対応できるようになり、顧客の満足度を高めることができるでしょう。こうした知識や技術は、 他のディーラーや整備工場に転職しても役に立ちます。
また、同じ車関連の職種でも活用できるでしょう。例えば機械系のエンジニアやカーディーラーの営業職などです。中古車を買い取る業務の場合 、「中古自動車査定士」という資格があります。 6ヶ月以上整備士の実務経験があれば受験できます。
「整備士」ってどんな仕事?
では、整備士は具体的にどのような仕事をするのでしょうか。
整備士の仕事内容
整備士の仕事は、大きく分けて3種類あります。 」
1.点検整備…車検や定期点検など、車の点検を行い、不具合があれば部品を交換するなどして、故障を未然に防ぎます。
2.緊急整備…故障や事故による修理も含まれます。元通り走れるようにするのはもちろん、先述のとおり迅速さも要求されます。より緊張感のある業務です。
3.分解整備…その名のとおり、エンジンやミッションを分解して部品を交換したり、修理をしたりする業務です。地方運輸局長から認証・指定された工場のみで許されます。
これらは単に整備して終わるのではなく、顧客とのコミュニケーションも欠かせません。例えば故障箇所を突き止めたり、修理の状況を説明したり、点検方法をレクチャーしたりするなどです。
ほかにも勤務先によっては、顧客が購入したカーナビなどのオプションを代わりに取りつけたり、車を指定された場所まで運転したりする場合があります。
整備士になるにはどうしたらいいの?
整備士自体は、 資格がなくても、カーディーラーや整備工場で採用されれば、誰でもなれます。ただし、整備士の資格が不要な仕事がメインで、車の整備には携われないことがほとんどでしょう。
一人前の自動車整備士になるには2通りの方法があります。
1つ目は、自動車整備関連の専門学校や短大、大学に通う方法です。2年通えば2級、4年通えば1級自動車整備士の資格を受験する権利が発生します。実技試験は免除され、学科試験(1級は口述試験もあり)に合格すると、それぞれの自動車整備士になれるわけです。
2つ目は、自動車整備業界で働く方法であり、1年以上働くと3級自動車整備士の資格を受験する権利が発生します。ただし、高校の機械科を卒業しているなら、権利が発生するのは6ヶ月以上です。試験は学科試験に加えて、実技試験もあります。3級からステップアップして1級を目指すのも可能です。
整備士資格の種類と取得方法
同じ1級や2級、3級でも、さらに複数の資格に細分化されます。詳しく見てみましょう。
整備士の資格の種類
各級には、それぞれ以下の資格があります。
1級は自動車検査員以外の整備を行えるハイレベルな資格です。ほとんどは整備の実務は2級の資格でほとんど事足りるため、必ずしも取得しなければいけないものではありませんが、技術の高さを証明させることができます。
1級小型自動車整備士
1級大型自動車整備士
1級二輪自動車整備士(2020年1月現在、試験は行われていません)
2級は自動車整備士の中でも、ぜひ取得しておきたい資格で、整備工場を運営する上でも1人以上は必要です。
2級自動車シャシ整備士
2級ガソリン自動車整備士
2級ジーゼル自動車整備士
2級二輪自動車整備士
3級は基本的な車の整備ができるレベルで、最低限必要とされる資格です。
3級自動車シャシ整備士
3級自動車ガソリン・エンジン整備士
3級自動車ジーゼル・エンジン整備士
3級二輪自動車整備士
ほかにも、特殊整備士という資格もあり、自動車電気装置整備士、自動車車体整備士、自動車タイヤ整備士(2020年1月現在、試験は行われていません)の3つです。こちらは、一定期間の実務経験があれば受験できます。ただし、同じ自動車整備関連の学校を卒業しても、専攻が2級自動車整備士なら1年ですが、特殊整備士なら卒業と同時です。
その後のキャリアパスとしては、1級または2級自動車整備士から自動車整備主任者に任命され、さらに試験を受けて自動車検査員になるという流れがあります。
このように、整備士の資格は数多くあり、それぞれにできる整備の範囲が異なるので、同じ級でも複数の資格を取得しておいたほうが有利です。
整備士資格の取得方法
初めて整備士の資格を取得するのであれば、自動車整備関連の学校を卒業することが、早く整備士になれる近道です。さらに卒業するだけで実技試験が免除され、実務経験が無くても、通った年数に応じて受験する権利が発生するので独学よりも取得する確率は高くなるのではないでしょうか。
また、自動車整備関連の学校で勉強すれば、自動車の整備に必要な知識を満遍なく習得できます。特に実技の講習があるのは大きな強みでしょう。独学では、そのような機会を得るのは困難です。
整備士は慢性的に不足しているので、資格を持っていれば就業や転職のチャンスが広がるでしょう。クルマヤドットネットなら、職種から「整備・メカニック」を選択すると、整備士の求人を見つけられます。
まとめ
自動車整備士の資格は、1回取得すると生涯有効であり、更新のために研修を受ける必要もありません。ただし、上位資格にあたる自動車検査員は年1回研修を受ける義務があります。資格があれば車を安全に整備できるようになり、業務の幅が広がるだけでなく、転職するときも有利です。